ITパスポート試験 用語辞典

コンプライアンス
【Compliance】
企業倫理に基づき、ルール、マニュアル、チェックシステムなどを整備し、法令や社内規則、業界ガイドライン、倫理、道徳を遵守した企業活動を行うことをいう。企業の法令遵守という意味がある。
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別名:
法令遵守
分野:
分野:ストラテジ系
中分類:法務
小分類:その他の法律・ガイドライン
出題歴:
H21年春期問1 
重要度:
(Wikipedia 企業コンプライアンスより)

企業コンプライアンス(きぎょうコンプライアンス、corporation compliance)とは、レートガバナンスの基本原理の一つで、企業が法律や内規などのごく基本的なルールに従って活動すること。ビジネスコンプライアンスという場合もある。「コンプライアンス」は「企業が法律に従うこと」に限られない「遵守」「応諾」「従順」などを意味する語だが、以下では主にこの語を使う。

今日ではCSR(corporate social responsibility の略。企業の社会的責任履行)と共に非常に重視されている。

近年date=2010年11月、法令違反による信頼の失墜や、それを原因として法律の厳罰化や規制の強化が事業の存続に大きな影響を与えた事例が繰り返されているため、特に企業活動における法令違反を防ぐという観点からよく使われるようになった。こういった経緯から、日本語ではしばしば法令遵守と訳されるが、法律や規則といった法令を守ることだけを指すという論もあれば、法令とは別に社会的規範や企業倫理(モラル)を守ることも「コンプライアンス」に含まれるとする論もある(後述の「コンプライアンスとモラル」参照)。また、本来、「法的検査をする」といった強い実行性をもっている。

関連法規

会社法は条数のみ記す。

株式会社においては、商法(会社法)上取締役ないし執行役の義務(法定責任)として規定されている。理論的には善管注意義務(330条)ないし忠実義務(355条)の発現とされ監査役なども同様の義務を負っている(330条)。

企業も社会の構成員の一人として商法(会社法)だけでなく民法・刑法・労働法といった各種一般法、その他各種業法をすべて遵守し、従業員一同にもそれを徹底させなければならないとされ(348条3項4号、362条4項6号)、特に大会社については、内部統制システム構築義務が課されている(348条4項、362条5項)。

コンプライアンス違反

このコンプライアンスに違反することをコンプライアンス違反と呼び、コンプライアンス違反をした企業は、損害賠償訴訟(取締役の責任については株主代表訴訟)などによる法的責任や、信用失墜により売上低下などの社会的責任を負わなければならない。

企業の犯す企業犯罪の1つでもあり、発覚した場合は不祥事として報道されることが多い。またその不祥事の原因となる比率が高い要素でもある。

コンプライアンスとモラル

一部でモラルと混同されることがあるが、コンプライアンスはあくまで「法令遵守」であるため、モラルとは別に扱うべきだとする考え方がある。

この考え方によれば、コンプライアンスを純粋に「法令遵守」と考えると、法令がモラルに反している(あるいはモラルが法令に反している)場合、法令を遵守すればコンプライアンスは成立する。言い方を変えると、その行動がモラルに合致していても、法令に則っていなければコンプライアンス違反となる。また、法令に定められていない範囲で行われるモラル違反(いわゆる「法律の不備による抜け穴」を突く行為など)はコンプライアンスの範疇に属さない。

したがって、たとえコンプライアンス違反に問われる行為を行っていなくても、モラルに反する行動をしたことにより、社会からの信用を失い、結果的に損失を負う企業が存在する。
もちろん、モラル違反による信用失墜はリスク・マネージメントの中で管理して回避・防衛すべきものであり、コンプライアンスと混同すると混乱を招く恐れがある。しかし、リスクの大きさとしてはどちらも経営上の重要な要素であるため、あえて総合的に扱おうという考え方(「フルセット・コンプライアンス論」を参照)もある。

コンプライアンスマネージメント

組織内において、コンプライアンスを遵守できるよう経営管理し、事業活動を行うこと。
コンプライアンスプログラムや、行動指針、コンプライアンス規定、事業部門から半独立したコンプライアンス組織、コンプライアンス監査が実施・設置されることが求められる。昨今では、リスクマネジメント対策として調査会社を外部顧問として迎えている大手企業も少なくはない。複雑なリスクに対して会計監査のみではもはや対応できないと専門家は指摘している。それらを打破する為には証拠調査士など専門職の力が必須である。

コンプライアンスプログラム

組織機能として、コンプライアンスを実現させる仕組みを指す。 専門部門やコンプライアンス監査などの機能が設置され、日々変化がある社会情勢や法令に対して、組織がコンプライアンス対応ができる態勢のことを指す。

フルセット・コンプライアンス論

名城大学教授郷原信郎らが提唱する、「コンプライアンス=法令遵守ではなく、法令の遵守を含めた『社会的要請への適応』である」という考え方である。

企業の存在には、利潤の追求だけでなく、食品メーカーであれば「安全な食品を供給してほしい」、放送局であれば「歪曲されていない、良質な番組を流してほしい」など、社会からの潜在的な要請があり、各種法令にも、制定に至るまでには社会からの要請がある。法令は常に最新の社会の実情を反映できているわけでなく、司法もまた万能ではない。ゆえに、単に法令のみの遵守に終始することなく、社会からの要請に応えることこそがコンプライアンスの本旨であるというのがフルセット・コンプライアンス論の趣旨である。

フルセット・コンプライアンス論では、法令を単純に条文通りに解釈し、「法の抜け穴」を突いたり、過剰に法律を振りかざしたりすることはコンプライアンスに背くこととしており、上記「コンプライアンスとモラル」の項とは矛盾する部分もある。

コンプライアンス違反例

(2000年以降の主なもの)
  • 製造業を中心として行われている偽装請負
  • 顧客の個人情報やプライバシーを軽視する
  • 従業員や利用者(顧客)の安全・企業としての社会的責任や潜在需要、使命を軽視
    • ドン・キホーテ放火事件(2004年)- ドン・キホーテは被害者の立場だったにもかかわらず、消防法や各種条例に違反した店舗運営を行っていたことなどが被害拡大の原因として非難された。
    • しずてつジャストライン(2005年)- 閑散路線最終便の末端区間で、運転士の独断で路線バスの運行を打ち切り、営業所に帰庫(無断欠行)していたことが、終着地転回場の近隣住民から発覚。その後同社では、同様の事案が複数判明。
    • 福知山線脱線事故(2005年) - 安全対策の軽視、それに対する投資額の低さ、ヒューマンエラーを冒した従業員に対し「日勤教育」と呼ばれる懲罰的制度が行われていたことが明るみになるなど、JR西日本の企業風土が総合的に非難された。
  • いわゆるサービス残業
  • 下請け会社に対する代金の不当な値引きなど、いわゆる『下請けいじめ』
  • 企業による脱税・申告漏れ・所得隠し
    • 特に2000年代以降、頻繁に報道されるようになっている。
    • 西松建設の裏金捻出・横領事件
  • 食品関連の諸問題
    • 原材料・産地の意図的な偽装
    • 牛肉偽装事件(雪印食品・日本ハム・伊藤ハムなど)
      • 雪印牛肉偽装事件
      • 日本ハム 牛肉偽装・隠蔽事件
      • 伊藤ハム 輸入豚肉関税法違反事件
    • 牛肉ミンチの品質表示偽装事件(ミートホープ・加ト吉など)
    • 不二家 - 期限切れ原材料使用問題
    • 船場吉兆 - 賞味期限切れの菓子・惣菜の販売/みそ漬けの産地偽装/ 客の食べ残しの再提供
  • 証券会社による、主に高齢者に対する、手数料収入目当てに次々に金融商品を買い換えさせる『回転売買』。
  • 保険業界の保険金不払い事件
    • 生命・損害保険による特約や第三分野保険の不払いなど。約款によれば契約者が請求しなければ支払いの義務は生じない訳である。しかし、専門用語を多用し細かくなりすぎた特約や、第三分野保険をすべて理解している契約者は少なく、契約道徳上不義理と各社は評価を落とした。その結果、保険契約残高は大幅に減少し、保険業界は危機感から、契約者の請求がなくとも保険適応を知らせるサービス開始をせざるを得なかった。
  • 三菱自動車工業のリコールの放置(いわゆるリコール隠し)
  • 暴力団・総会屋などの反社会的勢力に対する利益供与行為
  • 土壌汚染問題
  • 違法な日雇い派遣
    • フルキャストやグッドウィルなどによる、違法な派遣(禁止されている業種への派遣や多重派遣など)が問題となり、今後日雇い派遣が完全に禁止する方向へと検討されることになった。
  • 銀行などの金融機関による、主として中小・零細企業に対する『貸し渋り』・『貸し剥がし』行為。
  • プリンスホテルが日本教職員組合(日教組)の集会への会場使用を一方的に拒否し、日教組の会場使用を求める仮処分提訴が認められたにもかかわらず、一切応じなかった問題。
    • この件は警視庁がホテルと社長など幹部4人を旅館業法違反の疑いで書類送検し、日教組の損害賠償訴訟では判決文で「司法制度の基本構造を無視するもので違法性は著しい」と指摘され、請求金額全額が認められる一審判決が出た。西武グループ全般のコンプライアンス体制の問題ともいえる。

一旦コンプライアンス違反を引き起こすこととなれば、企業イメージの低下に繋がるだけでなく、同業者全体の信用と評判を落とすことは避けられず、不買運動など今後の企業活動に大きなダメージを与える現象が起こりうる。

出題例

コンプライアンス経営を説明したものはどれか。

[出典]ITパスポート 平成21年春期 問1

  • 株主に対して企業活動の正当性を保持するために,経営管理が適切に行われているかどうかを監視し,点検する。
  • 株主やそのほかの利害関係者に対して,経営活動の内容,実績に関する説明責任を負う。
  • 企業倫理に基づき,ルール,マニュアル,チェックシステムなどを整備し,法令や社会規範を遵守した企業活動を行う。
  • 投資家やアナリストに対して,投資判断に必要な正確な経営情報を適時に,かつ継続して提供する。
正解 

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