現実の世界とCGなどでつくられた仮想の空間を組み合わせ、それらを融合し、両者があたかも一体化しているような体験を実現する技術の総称。

現実空間に、コンピュータグラフィックスなどの仮想情報が重ねて表示され、その情報が周囲環境に応じて動き、リアルタイムで操作し、その反応を確認することができる。たとえば、現実の机の上に仮想の3Dオブジェクトを表示し、そのオブジェクトを手の動きで動かしたり、向きを変えたりすることができる。これは拡張現実（AR）とは異なり、仮想オブジェクトが現実空間と相互に影響を与え合うことにより、より現実感の高い没入体験を提供する。

この複合現実を実現するためには、現実空間における仮想オブジェクトの位置関係を正しく認識し、適切に配置するためのセンサー技術、ヘッドセットやスマートグラスなどを用いてユーザーの視野に仮想世界を重ね合わせるためのディスプレイ技術、周囲環境や物体を認識し、仮想と現実をより高度に統合するためのAI技術などがある。また、複合現実内での操作には、手のひらや指によるジェスチャー操作、音声による操作、アイトラッキング（視線追跡技術）による視線に基づくインタラクション、振動や触覚を提示するハプティックフィードバックなどがある。

代表的なデバイスには、マイクロソフトの「HoloLens 2」などがあり、建築設計、医療、教育、エンターテインメントなど、さまざまな分野での活用が進んでいる。たとえば、医療分野では、人体の3Dモデルを視覚化しながら治療計画を立てることが可能である。複合現実は、仮想世界を現実に溶け込ませることで、従来にない体験や作業効率の向上を実現する技術であり、今後、日常生活やビジネスの場面での活用がさらに広がることが期待されている。