ITパスポート試験 用語辞典

インダストリー4.0
【Industry 4.0】
AIやIoTの活用によってもたらされる「第四次産業革命」のこと。インダストリー4.0の主眼は、スマート工場を中心としたエコシステムの構築であり、生産現場における製造機器や部品などがすべてネットワークを介して接続され、ダイナミックに最適制御されることにより生産効率を飛躍的に高めることができると期待されている。ドイツが国を挙げて推進している。
水力・蒸気機関を活用した機械製造設備が導入された第1次産業革命、石油と電力を活用した大量生産が始まった第2次産業革命、IT技術を活用し出した第3次産業革命に続く歴史的な変化として位置付けられている。
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分野:
分野:ストラテジ系
中分類:ビジネスインダストリ
小分類:民生機器・産業機器
重要度:
(Wikipedia インダストリー4.0より)

インダストリー4.0(Industrie 4.0、Industry 4.0)は、が勧奨して、2011年にが発表したドイツ政府が推進する製造業のデジタル化・コンピューター化を目指すコンセプト、国家的戦略的プロジェクトである。IoTの普及についてトップダウンで国家プロジェクトとした世界初の事例となる。

「インダストリー4.0」を日本語に直訳した場合には、「第四次産業革命」の意味合いもあるが、「IoTやAIを用いることによる製造業の革新」という一般的な意味の第四次産業革命とドイツの国家プロジェクトとしてのインダストリー4.0とでは意味合いが異なることもある。

概要

を導入した「スマートファクトリーの実現」がインダストリー4.0の根幹である。生産工程や流通工程のデジタル化により、生産や流通の自動化、バーチャル化を大幅に高めることで、生産コストと流通コストを極小化し、生産性を向上させることを主眼に置いている。

生産ラインの高効率化は以前から行われていたが、生産設備が機器故障によって停止することのないよう機器の故障や異常を事前に予知して保全することで生産設備の稼働率を高める予知保全なども重要なポイントとなる。IoT技術の導入によって、機器の稼働情報や設置場所の温度、湿度といった情報などをビッグデータとして集め、パフォーマンスの低下などをAIによって検出し、修理を行うことで、以前のように平均故障間隔などから行っていた保全よりも、より的確に保全が行えるようになる。

設計原則

以下の4原則を基本としている。
  • 相互運用性(Interoperability) - 機械、デバイス、センサーおよび人間が相互に接続し通信を行う。
  • 情報の透明性(Information transparency) - 情報を解釈可能化させるため、システムがセンサーデータに基づいて実世界の仮想コピーを生成する。
  • 技術的アシスト(Technical assistance) - 人間の判断・問題解決を支援する、および人間が行うには困難または危険なタスクを補助する。
  • 分散的意思決定(Decentralized decision-making) - サイバーフィジカルシステムが意思決定できるようにし、出来る限り自律化させる。

歴史

1989年に西ドイツと東ドイツがドイツ再統一を果たすが、東ドイツの生産性は低く、「欧州の病人」と呼ばれるほどドイツ経済は悪化することになった。シュレーダー改革、産業クラスター政策といった政策によって、わずか十数年でドイツ経済は大きく改善するが、2010年頃にはシュレーダー改革、産業クラスター政策の両方とも飽和状態となって生産性向上は頭打ちになった。一方で経済成長は好調であり、成果配分を求める労働者の声を反映することで賃金は上昇する。生産性の増加率と賃金の増加率の乖離は次第に顕著になっており、ドイツ政府は今後の経済発展の原動力となる成長戦略が必要だと考えていた。

ドイツに本社を置くヨーロッパ最大級のソフトウェア会社であるSAPも売上げが飽和しつつあったため、新規分野を必要としていたが、SAP1社のみでは対応できずにいた。SAP会長がドイツ工学アカデミー会長に就任した際にインダストリー4.0を提唱し、これにシーメンス、ロバート・ボッシュといった企業、フラウンホーファー協会、アーヘン工科大学、ミュンヘン工科大学といった研究所や工科大学、および、機械、電気、情報の業界3団体などが賛同したことで、国家プロジェクトに採用され、2011年頃にドイツ国内で議論がスタートした。

2013年4月には、関係者が合意した「Recommendations for implementing the strategic initiative INDUSTRIE4.0, Final report of the Industrie4.0 Working Group, April 2013」が公表された。

2015年4月には、ドイツ国内の労働組合や商工会議所がインダストリー4.0に基づく新しいプラットフォームに参加するなどドイツ国内での理解の深まりや広がりが見られている。また、2016年には通信プロトコルの標準化や共同研究開発のため、ドイツから日本への協調の呼びかけも行われている。

インダストリー4.0で実現する事

  • モノのインターネット化(IoT)により、設備が人と協調して動く、サイバーフィジカルシステムCyber-physical systemが実現
  • 拡張現実を活用した、オペレーター作業支援
  • ビッグデータやクラウドコンピューティングを活用した、徹底した品質追跡管理および工程改善
  • 消費者に合わせた一品一様の商品づくりである、マスカスタマイゼーション

インダストリー4.0の語源

第一次産業革命では水や蒸気を動力源とした機械を使った生産の事を指し、第二次産業革命では電気を使い機械を動かして分業の仕組みを取り入れたことにより大量生産(マス・プロダクション)が可能となり、そして第三次産業革命ではコンピュータ制御(プログラマブルロジックコントローラ)により生産工程の自動化(コンピュータ統合生産)が実現された。インダストリー4.0はそれに続く「第四次産業革命」という意味合いで名づけられたものである。

インダストリー4.0の呼称

インダストリー4.0は、英語ではIndustry 4.0、ドイツ語ではIndustrie 4.0と記され、日本語ではインダストリー4.0として認知されているが、インダストリ4.0インダストリアル4.0と表記されることもある。

日本版インダストリー4.0

ドイツのインダストリー4.0に続き世界各国で様々なコンセプトが打ち立てられているが、日本でも2017年3月にドイツのハノーバーで開催されたCeBIT2017で「コネクテッドインダストリーズ」という戦略を打ち出した。コネクテッドインダストリーズでは、自動化と人や機械の接続が進み、人手不足の解決策として期待されているが、大企業だけではなく中堅・中小企業が恩恵を受けると考えられている。

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