本来は生物学の用語であり、環境下における生物の相互関係を意味する「生態系」から転じて、経済・技術・社会など様々な分野において、企業・大学・自治体などが相互に連携し、単独では生み出せない価値の創出や競争優位性の確立を目指す仕組みを指す言葉である。IT分野においては、特定の技術やプラットフォームを中心に、多様な製品・サービス・企業・開発者が相互に関わり合い、共存しながら発展する仕組みを指す。

クラウドサービス基盤を提供し、様々な企業がその上でサービスを展開するAmazonのAWS（Amazon Web Services）や、開発者と連携してアプリ提供を行うAppleのApp StoreやGoogleのPlayストアなどは、エコシステムの代表例である。これらでは、技術やサービスを核として多くの関連企業やユーザーが相互に連携しており、このようなエコシステムの中では協力と競争が行われ、新たな価値が生み出される。一方で、特定の企業が支配的な立場になると、そのプラットフォームに依存するリスクが生じる。大手プラットフォームの方針変更が関連企業や開発者に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、エコシステムは技術やサービスの発展に大きく貢献する一方で、そのバランスを適切に保つことが重要である。

エコシステムは、産学官が連携する政府関連施策においても注目されている。科学技術政策であるSociety 5.0（日本政府が提唱する、目指すべき未来社会の姿）の実現に向けて、新たな価値を創出し、社会的に大きな変革をもたらすための「イノベーション・エコシステム」の推進や、新規事業立ち上げを支援する「スタートアップ・エコシステム」の拠点選定などの施策が進められている。