企業が従業員を単なる労働力としてではなく、企業価値を向上させる重要な資本と捉え、その育成や活用に注力する経営手法のこと。

企業は従業員に対し、必要な知識や最新技能の習得を支援する教育プログラムの導入、キャリアパスの明確化による従業員のモチベーション向上と支援、働きやすい環境の整備などを行うことで、個々の能力を向上させ、企業全体の生産性や競争力を強化し、中長期的に企業価値を向上させることを目指す。この考え方は、「従業員の成長は企業への投資である」と見なすものであり、その背景には、急速な技術革新に対応するための人材育成が求められていることや、SDGsの目標8に「働きがいも経済成長も」が掲げられ、経済成長における人材重視の在り方が不可欠となっている現状がある。

現在、人的資本経営への理解と取組を進めるため、経済産業省から経営陣や取締役会、投資家が果たすべき役割や、人材戦略に求められる3つの視点と5つの共通要素などをまとめた「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する報告書～人材版伊藤レポート」が公表されている。また、人的資本経営コンソーシアムが設立されており、多くの企業や専門機関、投資機関が参加し、人的資本経営の実践に関する先進事例の共有、企業間協力に向けた議論、投資家との対話の場の設定などが行われている。